相続手続きに関してプロの覚え書き

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遺産分割時は要注意!ハンコ代、相続分のないことの証明書、借地権…

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ハンコ代の注意点

ハンコ代に関しては、税金上で一つ注意することがあります。それはやり方が悪いと相続税と贈与税の二重払いが発生してしまうということです。
要はハンコ代も遺産分割協議書に載せておくことです。そうしないでAという相続人がBという相続人にハンコ代を渡してしまうと、それは贈与ということになり、相続税ではなく、贈与税がかかってしまいます。遺産の額によってはAは相続税を払い、ハンコ代を受け取るBは、贈与税を支払うという、二重の支払いをするはめになる場合があります。
そうならないためには、遺産分割協議書の書き方としては、Aが多くとる代わりに、Bや他の相続人には500万円ずつ払うなどと記しておけば、贈与にはなりません。ただハンコ代も110万円以下なら、贈与となっても非課税ですが。

 

普通借地権の相続

質問:
亡父が借地上に家屋を所有し、兄の家族と同居していました。
普通借地権の期限は父が亡くなる三ヶ月前に切れましたが、直後に兄は父に無断で更新料を払い、地主との間で兄名義の借地契約を結んでいました。この借地権は相続財産になりますか?

回答:
結論は相続財産になります。
借地権は、土地の価格の2割~7割の価値を有する財産であり、原則として相続の対象になります。しかし、借地権の種類によっては、借地期間の満了により消滅し、相続されないものもあります。借地権には普通借地権と定期借地権があります。
ご質問の場合は普通借地権なので、ここでは定期借地権のお話は省略します。普通借地権は存続期間を三十年(契約時にこれ以上長い期間を定めた場合はその期間)とします。地主側に自分で使用する必要があるなど、明渡しのための正当な理由がない限り更新されます。更新される期間は、一回目に限り20年、二回目以降は10年です。
普通借地権の更新は法定更新といわれ、たとえ契約期間が満了し、借主と貸主の間で更新契約が行われなくても、法的には更新契約をしたと見なされます。
ですからご質問の場合、普通借地権の性格から、従前の契約の法定更新がなされていることになり、借地権は遺産と見なせます。お兄さんが普通借地権の期間満了を見計らい、契約者だったお父さんに無断で自分名義の契約を結んでした名義変更は法的に無意味です。

 

 

相続分がないことの証明書とは?

質問:
「相続分のない事の証明書」とはなにか

父の死後、兄から相続登記に必要だからと、「私は生前父より相続分を超える贈与を受けました」という内容の書面が届き、署名押印して返送するように指示されていたのでそのようにしましたが、この書面はどういう意味があるのでしょう。遺産分割の上で不利になるのでしょうか。

回答:
この書面は、一般に『相続分のない事の証明書』あるいは『特別受益証明書』といわれているものです。法律(民法)の規定では、生前の被相続人から相続分を超える額の贈与を受けた相続人はその相続分を受ける事ができないとされています。そこでこの規定に着目して、質問のような趣旨の書面を作る事によりもっぱら共同相続人の中の一人に遺産を集中させ、あたかも遺産分割が終了したような効果をあげることが可能になります。
都合の良い事にこの証明には生前贈与の明細や相続分ゼロとする計算上の根拠を特に書かなくても構わない上、当証明書は登記原因証書として扱われるため印鑑証明書付きであれば一部の相続人が単独で登記申請することができます(だから特に不動産の遺産を独占するための方法といえます)。

 要するに、『相続分のない事の証明書』に署名押印すると事実上、相続放棄や自分の相続分を譲渡したのと同様の結果になるということです。
しかし遺産に負債がある場合はそれは受け継ぐ事になりますから相続放棄より辛いとも言えます。証明の内容が事実に反していても裁判例は証明書が自由意志で作られる以上は全遺産を特定の相続人に帰属させるとする実質的な分割協議がなされたなどの理由から当証明書を有効とするものが多く、さりとて詐欺や強迫による取消を主張しても立証は極めて難しいでしょう。反対に事実であったとしても他の相続人との間は無論のこと、被相続人や自己の債権者との間の後日の紛争の種になる可能性が残ります。

 このように『相続分のない事の証明書』を作成して相続を処理しようとしても様々な問題の生じるおそれがあるので、実際贈与等であなたに相続分がないか、あっても相続する意思がないのなら、現在父の死後3ヶ月以内の時点であれば家裁に正式な相続放棄の申述を申し立て、その受理証明書を受けて兄に送るべきですし、実際には生前贈与などなかったり、あったとしてもなお相続分があるはずと思われる時には安易に署名押印せず、分割協議ができるよう働きかけるべきです。
 あなたはすでに署名押印して兄に送ってしまっていますが、印鑑証明書を留保しつつ、やはり兄と分割協議を正式に行うよう要求するのが良いと思われます。